自動車整備業界の現状とは

自動車整備業界の抱える問題について解説します。人材不足や給与、労働環境など多方面からの問題について解説しているので、これから整備士を目指す人は基本情報としてチェックしてください。

人材不足の課題について

原因

少子高齢化の波は、自動車整備業界にも及んでいます。 令和3年に日本自動車整備振興会連合会から発表された「自動車特定整備業実態調査結果概要」によれば、2014年度から2019年度にかけて、6年で5589人も自動車整備士が減少しています。さらに日本自動車整備振興会連合会の調査によると、2010年における整備要員の平均年齢は42歳。2020年では50代になっていると予想されます。

また「自動車整備白書 平成26年度版」によると、約50%の整備事業場で整備士が不足しているという結果から、近年では自動車整備士の高齢化が進んでおり、若者世代の整備士が不足していることが伺えます。

整備士の高齢化だけではなく、若者の車離れや経済的な問題で車を持たない人が増えており、車への興味が昔より減ったことも、自動車整備士を目指す若者が減っている要因の一つであるといえます。

参照元:(PDF)日本自動車整備振興会連合会公式HP(http://amsdl.bril-wp.com/shinnkoukai/H28%20sindansi-to.files/gaiyoubann.pdf)

参照元:関東工業自動車大学校公式HP(https://kanto-koudai.com/blog/labor-shortage-problem/)

参照元:国土交通省資料(自動車整備士不足の現状と行政の取組)【PDF】(https://www.mlit.go.jp/common/001095345.pdf)

解決できるのか

従業員の高齢化で自動車整備士の数は減少していますが、整備工場の数は近年変わりない状況です。日本自動車整備振興会連合会による「自動車特定整備業実態調査結果概要」の資料では、2015年度から2020年度を比較しても、整備工場の数はほとんど横ばい状態であることが分かります。

参照元:令和2年度 自動車特定整備業実態調査結果概要【PDF】(https://www.jaspa.or.jp/Portals/0/resources/jaspahp/member/data/pdf/R02jittaityousa.pdf)

自動車整備士は人手不足ですが、雇用に関してはまだ高い需要があるといえるでしょう。A2規模(4~10人)以上の整備工場では、30歳未満の若い整備士を増やして工場の若返りを望んでいることが、自動車整備振興会連合会のアンケートから伺えます。

さらに自動車整備士不足の現状に、近年国も動き出しました。国土交通省では、平成26年4月に「自動車整備人材確保・育成推進協議会」を発足させて、自動車整備士の育成を支援しています。

一時的に不足している自動車整備士ですが、車という社会インフラはこれからも必要とされています。整備士の需要自体はあるので、政府の支援や整備工場の努力により、人手不足問題は解消していくことが予想されます。

給与面の課題について

原因

薄給激務というイメージのある自動車整備士。日本自動車整備振興会連合会が発行する「平成30年度版 自動車整備白書」によると、自動車整備士の給料の平均は45歳で約26万円。年収は約391万円で、月の手取りは20万円程度になり、この額だけを見るとやはり整備士の給料は低いと感じる人がいるでしょう。

参照元:平成30年度版 自動車分解整備業実態調査結果の概要について【PDF】(https://www.jaspa.or.jp/Portals/0/resources/jaspahp/member/data/pdf/H30jittaityousa.pdf)

しかし、自動車業界に限らず多くの業界で給料が減ってきているという状況です。厚生労働省が発表した「令和2年賃金構造基本統計調査」では、40代前半で大企業の平均年収は約377万、中小企業で約331万円、小企業では約302万円という結果に。

ほかの業界に比べて給料はやや高い傾向にある自動車整備士ですが、仕事内容が肉体労働できついというイメージがあることから、給与が割に合わないと感じる人もいるのでしょう。

参照元:令和2年賃金構造基本統計調査(企業規模別)【PDF】(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/dl/04.pdf)

解決できるのか

自動車整備士の給与を上げるにはいくつか方法がありますが、まず行いたいのが国家資格の取得です。

国家資格を取得することによりスキルアップされ、仕事の幅が広がるだけでなく、資格手当が支給されます。自動車整備士の資格には3級から1級まであり、特殊整備士のようなタイヤや電気装置などの専門的な資格もあるため、働く整備工場や自分が希望する資格取得を目指しましょう。

他には年収アップの交渉や管理職を目指すなどの方法があります。年収の交渉は、これまでに培った経験や勤続年数が年収アップの根拠となるため準備しておきましょう。管理職はこれまでの経験や実績が評価されることで、所属する工場の役職に抜擢されることがあります。

労働環境面の課題について

原因

自動車整備士は厳しい労働環境の中、きつい肉体労働を行うというマイナスイメージがあります。古い民間工場では、エアコンや車体を持ち上げるリフトがない職場があり、夏は蒸し暑く冬は寒さの中で、危険な整備をしなければいけないこともあります。

また、中腰の姿勢を保ったまま長時間の整備を行うので、疲労がたまり体を壊してしまう従業員もいるようです。また休日が少なく残業もあるため、ゆっくり休むことができず、たまの休みには病院に行き体のメンテナンスをするという現状です。

職場によっても多少労働環境は変わりますが、自動車整備士の仕事はこういった過酷な状況でされており、若い世代が整備士の仕事を避ける要因の一つになっているようです。

解決できるのか

自動車整備士の労働環境は簡単に変えられるものではなく、リフトや大型設備の導入には費用がかかるし、エアコンの導入も半開放の作業場では難しいといえます。しかし近年では、夏に暑さ対策のアイテムを導入したり、スポットクーラーを導入したりと、過酷な労働環境からの改善が図られています。

また休日も週休二日を実施する企業が多くなっており、一般的な会社と同等の労働条件になってきました。

若者の車離れで整備工場の運営も先が見えない状況ですが、職場の労働環境を改善しようという社会の動きは見られます。国土交通省では平成26年に「自動車整備人材確保・育成推進協議会」を発足させて、自動車整備士の育成を支援しており、整備士の休暇や作業環境、労働環境や待遇の改善などに尽力しています。

まとめ

人材不足や給与、労働環境など、自動車整備士が抱える問題は多くあります。どれもすぐに改善できることではありませんが、整備士の抱える問題は、自動車業界に大きく影響するものです。しかし、企業も政府も整備士を支援する体制をとっているので、徐々に新しい流れが生まれてくることでしょう。

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